社会の DX ってやつは、あまり進んでいなさそう
2008 年 4 月から 2022 年 12 月まで、ほとんどの期間を「会社員」として過ごしていた。ぼくがこれまでに所属していた 3 つの会社はどれも「ソフトウェア企業」である。なにかしらのソフトウェアを開発し、それをビジネスモデルに組み込んで収益化し、運営されている組織である。
2023 年になって特定組織の所属ではなくなり、これまでとは異なる時間の過ごし方をするようになった。ソフトウェア企業ではない組織や、ソフトウェア企業ではあるがぼくから見てあまりソフトウェアを活用しきれていない組織の人々から相談を受ける機会がちょこちょこあって、お話を聞かせてもらったり、現場を少し見せてもらったりしている。
感じていることを雑感として記録しておこう。あくまでもぼくの観測範囲の話。
- デジタルなツール自体はけっこう普及している
- デジタルなツールの機能の全体像を把握した上で、それらを活用して自分たちのワークフローを設計・実装できる人はあまりいない
- デジタル云々を抜きにしても、そもそもワークフローを設計・実装できる人が少ないのかも
- 「うちは Slack を導入しています」だけど LINE と同等のメッセージング機能しか使っていない、って現場はけっこうあるのね〜という印象
- コミュニケーション
- Slack やら Zoom やら GitHub やら、多くの現場で使われていて「普及すごい!」と思う
- それと比較して、人間のコミュニケーション・スタイルはぜんぜん変化していないようにも思う
- フロー情報が多くて、ストック情報があまり生成されない
- 「同期的」「揮発的」「感覚的」なコミュニケーションが好まれている感触
- 人が集まって話した会の記録が残されないことも多い
- チームメンバー間の情報の格差がパフォーマンスに与える悪影響が軽視されていそう?
- 軽視というか、認識されていなさそうって感じか
- 不必要な属人性の高まり
- 2000 年と 2023 年を比べてみると
- 「メール → Slack」「電話 → Zoom」のように、より便利なツールへの移行は進んでいる
- でも人間のメンタルモデルはそれほど変わっていなくて、お仕事の様子もあまり変わっているようには見えない
- ローカルのファイルに大事な情報を貯める、みたいのは 2000 年頃から変わっていない
社会の「デジタル化」は進んでいるけれど、デジタルを前提としてその上にあれこれを構築するという意味での「デジタル・トランスフォーメーション」は、人間がネックになってあまり進んでいなさそう。
「うちの現場のデジタル・トランスフォーメーションを、本気で進めていくんだ!!!」という場にぼくが呼ばれたとしたら、貢献できることはたくさんありそう。でも「なんとなく DX ってやつを進めたい」くらいの温度の場にぼくが行っても、現場の人々に大きな変化を強いることになって嫌われそう。